ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの名言を、『自省録』の本文で確かめた15個だけ厳選。「人生とは考え方しだい」「最後の行いのように」「仕返しの最善の方法」など、心の持ち方・時間・仕事・人間関係の言葉を、英訳の原文・拙訳・巻と節の番号・背景つきで紹介します。">

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マルクス・アウレリウスの名言15選|『自省録』の原文(英訳)と巻・節つき

公開 2026-10-13 / 原文は Project Gutenberg 版 George Long 訳による。日本語訳はすべて拙訳

ローマ皇帝でありストア派の哲学者でもあったマルクス・アウレリウス。彼が自分のために書きとめた『自省録』は、2000年近くたった今も「心を乱さない生き方」の本として読まれています。ただ、ネットに出回る名言には、巻や節の番号がなく、現代の意訳を本人の言葉のように載せたものも少なくありません。この記事では、Project Gutenberg で公開されている George Long の英訳を一つずつ照らし合わせ、本文で確かめられた15個だけを、英訳の原文・拙訳・巻と節の番号・背景つきで紹介します。

CONTENTS

  1. マルクス・アウレリウスと『自省録』
  2. 心の持ち方についての名言
  3. 時間と死についての名言
  4. 仕事についての名言
  5. 人間関係についての名言
  6. 15の名言の出典一覧
  7. 『自省録』を読むなら
  8. よくある質問

マルクス・アウレリウスと『自省録』

Long 訳に付いた略伝によると、マルクス・アウレリウスは121年4月26日にローマで生まれ、161年に養父アントニヌス・ピウスが亡くなったあと皇帝になりました。若いころに詩や弁論術から哲学へ移り、ストア派に身を寄せたとあります。治世の後半はドナウ川沿いでゲルマン系の部族との戦いが続き、180年3月17日、陣中で病のため59歳で亡くなりました[1]。

『自省録』は全12巻。もともと人に読ませるためではなく、自分のために書いた覚え書きで、本当の題名はわかっていません。今の題は、写本に付いていた「自分自身へ」という意味のギリシア語の題に由来します[1]。第1巻の終わりには「グラヌア河畔、クァディ族のもとで」、第2巻の終わりには「カルヌントゥムにて」という書き添えがあり、戦地の陣営で書かれた部分があることがわかります[1]。

原文はギリシア語です。この記事では、1862年に出た George Long(1800〜1879年)の英訳[2]を「原文」として示し、そこから日本語に訳しました。つまり日本語は英訳からの重訳です。巻と節の番号(例:IV.3=第4巻第3節)は Long 訳の本文の見出しと節番号から取っています。

心の持ち方についての名言

『自省録』でいちばん繰り返されるのが、「つらさは出来事そのものではなく、自分の判断から生まれる」という考え方です。

ふだん考えていることが、そのままあなたの心の性格になる。魂は考えによって染まるのだから。(拙訳)

Such as are thy habitual thoughts, such also will be the character of thy mind; for the soul is dyed by the thoughts.

マルクス・アウレリウス『自省録』第5巻16節(George Long 訳・Project Gutenberg 版)[1]

このあと「だから、こういう考えを続けて魂を染めよ」と続き、最初の例が「人が生きられるところなら、よく生きることもできる」です。宮殿で暮らさなければならないなら、宮殿でもよく生きられる、と。置かれた場所を言い訳にしない、という教えです。

原文(Long 訳)拙訳出典
The universe is transformation: life is opinion.宇宙は変化であり、人生は考え方しだいだ第4巻3節[1]
Take away thy opinion, and then there is taken away the complaint, "I have been harmed." Take away the complaint, "I have been harmed," and the harm is taken away.自分の思い込みを取り去れ。そうすれば「傷つけられた」という不満も消える。「傷つけられた」という不満を取り去れば、害そのものも消える第4巻7節[1]
Look within. Within is the fountain of good, and it will ever bubble up, if thou wilt ever dig.内を見よ。内に善の泉がある。掘り続ければ、いつまでも湧き出る第7巻59節[1]
Loss is nothing else than change.失うとは、変わることにほかならない第9巻35節[1]
very little indeed is necessary for living a happy life幸せに生きるのに必要なものは、本当にわずかだ第7巻67節[1]

「人生は考え方しだい」は、だから現実を見なくていい、という意味ではありません。同じ出来事でも、「ひどい目にあった」と付け加えているのは自分の判断であって、その判断なら自分で変えられる、ということです。今でいう認知のゆがみの見直しに近い発想を、皇帝が戦地で自分に言い聞かせていたわけです。

時間と死についての名言

『自省録』には「やがて死ぬ」という言葉が何度も出てきます。ただしそれは悲観ではなく、だから今をちゃんと生きよという方向へ向かいます。

原文(Long 訳)拙訳出典
doest every act of thy life as if it were the last人生のひとつひとつの行いを、それが最後であるかのように行え第2巻5節[1]
Do not act as if thou wert going to live ten thousand years. Death hangs over thee. While thou livest, while it is in thy power, be good.1万年も生きるかのようにふるまうな。死はすぐ頭上にある。生きているうちに、できるうちに、善い人であれ第4巻17節[1]
Time is like a river made up of the events which happen, and a violent stream時は、起こる出来事でできた川であり、激しい流れだ第4巻43節[1]
no man loses any other life than this which he now lives, nor lives any other than this which he now loses人が失うのは、いま生きているこの人生だけであり、生きているのも、いま失いつつあるこの人生だけだ第2巻14節[1]

第2巻5節の「最後であるかのように」は、そう心がければ、投げやりさや見せかけ、自分への甘さ、与えられた分への不満から自由になれる、という文脈で出てきます。第2巻14節は、たとえ何千年生きるとしても、人が失えるのは「今」だけなのだから、長く生きても短く生きても同じだ、という話です。先のことを心配しすぎて今日を失う、という悩みにそのまま効く言葉です。

仕事についての名言

皇帝にも、朝起きたくない日はあったようです。第5巻はこう始まります。

朝、起きるのがつらいときは、こう考えよ。「私は人間としての仕事をするために起きるのだ」。そのために生まれてきた仕事をしに行くのに、なぜ不満を言うのか。それとも私は、布団にくるまって暖まっているために作られたのか。(拙訳)

In the morning when thou risest unwillingly, let this thought be present,--I am rising to the work of a human being. Why then am I dissatisfied if I am going to do the things for which I exist and for which I was brought into the world? Or have I been made for this, to lie in the bed-clothes and keep myself warm?

マルクス・アウレリウス『自省録』第5巻1節(George Long 訳・Project Gutenberg 版)[1]
原文(Long 訳)拙訳出典
No longer talk at all about the kind of man that a good man ought to be, but be such.善い人とはどうあるべきかを論じるのは、もうやめよ。そういう人になれ第10巻16節[1]

「論じるのをやめて、なれ」は、自己啓発書を読むだけで満足してしまう人への、2000年前からの注意書きのようです。読んだら一つ実行する。それがこの本の読み方でもあります。

人間関係についての名言

第2巻の冒頭は、人間関係についての有名な「朝の心がまえ」です。

朝のうちに自分に言っておけ。今日もおせっかいな人、恩知らずな人、傲慢な人、嘘つき、ねたむ人、つきあいの悪い人に会うだろう、と。彼らがそうなのは、何が善で何が悪かを知らないからだ。(拙訳)

Begin the morning by saying to thyself, I shall meet with the busybody, the ungrateful, arrogant, deceitful, envious, unsocial. All these things happen to them by reason of their ignorance of what is good and evil.

マルクス・アウレリウス『自省録』第2巻1節(George Long 訳・Project Gutenberg 版)[1]

この節は「だから私は彼らに傷つけられないし、腹を立てることも憎むこともできない。私たちは足や手やまぶたのように、協力するために生まれたのだから」と続きます。嫌な人に会う前提で朝を始めれば、実際に会っても心は乱れにくい。今でいう「期待値を下げておく」知恵です。

原文(Long 訳)拙訳出典
The best way of avenging thyself is not to become like [the wrong-doer].最善の仕返しは、相手と同じような人間にならないことだ第6巻6節[1]
Men exist for the sake of one another. Teach them then, or bear with them.人は互いのために存在する。だから教えるか、さもなくば耐えよ第8巻59節[1]

「最善の仕返し」の [the wrong-doer] の角かっこは、Long が補った語であることを示します。理不尽なことをされたとき、言い返すより先に「自分は同じことをしない」と決める。相手を変えられないときにも、自分で選べる行動は残っている、という考え方です。

15の名言の出典一覧

この記事で紹介した名言と、巻・節の一覧です(巻の順)。

#名言(冒頭)巻・節
1Begin the morning by saying to thyself…第2巻1節
2…every act of thy life as if it were the last第2巻5節
3no man loses any other life than this…第2巻14節
4The universe is transformation: life is opinion.第4巻3節
5Take away thy opinion…第4巻7節
6Do not act as if thou wert going to live ten thousand years.第4巻17節
7Time is like a river…第4巻43節
8In the morning when thou risest unwillingly…第5巻1節
9Such as are thy habitual thoughts…第5巻16節
10The best way of avenging thyself…第6巻6節
11Look within. Within is the fountain of good…第7巻59節
12very little indeed is necessary for living a happy life第7巻67節
13Men exist for the sake of one another.第8巻59節
14Loss is nothing else than change.第9巻35節
15No longer talk at all about the kind of man that a good man ought to be…第10巻16節

節の分け方や番号は、版や訳によって少しずれることがあります。日本語訳で探すときは、近くの節も見てみてください。

『自省録』を読むなら

Long の英訳はProject Gutenberg で無料で読めます[1]。thou や thy の古い英語ですが、一つの節が数行のものも多く、気になった巻だけ拾い読みできます。日本語訳は文庫や電子書籍でいくつか出ているので、試し読みで読みやすいものを選ぶとよいでしょう。

読み方向いている人
第2巻・第4巻・第5巻から読む名言を前後の文脈ごと読みたい人。この記事の言葉の多くがここにある
第1巻から順に読む人物を知りたい人。第1巻は家族や師から何を学んだかの感謝の一覧
寝る前に1節ずつ心を落ち着けたい人。本人も自分に言い聞かせるために書いている

『自省録』の日本語訳を探す

文庫・電子書籍など。訳者によって文体がかなり違うので、試し読みで比べられます。

版・訳者・電子版の有無は販売ページでご確認ください。

よくある質問

英語でよく見る「You have power over your mind - not outside events.」は『自省録』の言葉?
英語圏で広く紹介されている文ですが、本サイトが確認した Long 訳にはこの文言は見当たりませんでした。近い考えは、第4巻7節「自分の思い込みを取り去れ…」や第4巻3節「人生は考え方しだい」に出てきます[1]。
「障害こそが道になる(The obstacle is the way)」は?
そのままの文言は Long 訳にはありませんが、近い考えは第5巻20節にあります。心は行動の妨げを助けに変える、として「that which is an obstacle on the road helps us on this road(道の障害は、その道を進む助けになる)」と書かれています[1]。
『自省録』は何語で書かれた?
ギリシア語です。この記事の英文は1862年の George Long による英訳[2]で、日本語はそこからの拙訳です。
マルクス・アウレリウスは何をした人?
2世紀のローマ皇帝(在位161〜180年)で、ストア派の哲学を学んだ人物です。治世の後半はドナウ川方面での戦いに追われ、その陣中で『自省録』の一部を書きました[1]。

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出典

  1. Marcus Aurelius Antoninus, Thoughts of Marcus Aurelius Antoninus, translated by George Long(略伝 "Biographical Sketch" を収録・Project Gutenberg eBook #15877) https://www.gutenberg.org/ebooks/15877(2026年10月13日閲覧)
  2. Marcus Aurelius, Meditations(Meric Casaubon 訳。序文に主な英訳の一覧 "George Long, 1862" を収録・Project Gutenberg eBook #2680) https://www.gutenberg.org/ebooks/2680(2026年10月13日閲覧)